FAB RACERS CUP 2018レポート

5年目になったFAB RACERSは初のFabCafe開催。
今回はミニ四駆はもちろん、マイクロドローンやドローンを改造したホバーなどを組み合わせ、大人から子供まで1日遊べるイベントとなりました。

毎回プロアマ問わず多くのクリエイターたちが参加してくれるイベントですが、FabCafeがFAB RACERS CUPを実施しているのにはいくつか目的があります。

まず、「遊びを通じてものづくり意欲をモチベートするプラットフォーム」としての役割です。
FabCafeではいろいろなワークショップを実施し、それを通じてものづくりを始める人や、スキルアップする人を支援していますが、なかなか継続性を持って取り組める人は多くありません。FAB RACERSでは、技術を身につけるよりも、楽しむことを優先していることや、実際のカーデザイナーやエンジニア、ミニ四駆レーサーたちとコミュニティの中で関わり合いを持ちながらものづくりに取り組めるので、モチベーション高く取り組む人が多く、驚くほどの成長を見せる人や奇抜なアイデアが飛び出たりする面白さがあります。またコミュニティは、大会だけでなくオンラインでも繋がっており、このつながりをきっかけに友達になったり、一緒に仕事をしている人たちもたくさんいるのです。

そして、大会ではなにより「大人の本気遊びを子供に見せる」ということをポイントにしています。なかなか私生活の中で大人の本気で遊ぶ姿を子供が見ることって少ないと思うのですが、FAB RACERSに参加する大人たちはそのスキルをすべて注ぎ込んで本気で遊ぶので、作り上げられるマシンも、当日のパフォーマンスも桁違いに魅力的になります。
そういった本気を見せると子どもたちがキラキラした目で楽しんでくれますし、その中に自分も一緒に入って楽しんでくれます。そういったちょっと背伸びした経験もその子の未来の大人像にいい姿を見せられるのではと考えています。

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大人が真剣に遊ぶのがポイント

FabCafeでは、こういった自主性を持ったサスティナブルなコミュニティづくりの実践の場としてFAB RACERSコミュニティを運用しています。また、大会で実施されるワークショップでは、クリエイターたちと企業が一緒にサービス開発を行うことも行っており、単なるプロモーション以上の価値をビジネスパートナーにも提供しています。

遊びながら学べるワークショップたち

ミニ四駆AIチャレンジ! 君はAIに勝てるか?!

Quantumが開発したミニ四駆をAIでコントロールするモジュールを使い、人とAIが対戦するレースを企画、実施しました。すでにMaker Fairなどで発表されていたミニ四駆AIですが、それ単体で走っているだけではその魅力がなかなか伝わりません。また見ている側が気になるの、人より賢いの?どうなの?という疑問に対して、じゃあ直接対戦して比べてしまおうというレースを企画。対戦を通じて学習し変化していくAIの走りを見ることで、AIの面白さに気づくことが出来るイベントとなりました。

エンジニアリングクラス ミニ四駆でエンジニアリングを体験しよう

今回、子供や初心者たちがよりミニ四駆を使ってものづくりの楽しさを体験できるように、これまでは1種類で実施していたミニ四駆ワークショップを、エンジニアリングクラスとデザインクラスに分割。これによってエンジニアリングクラスでは、作って、走らせて、改良して、また走らせてというSTEAM教育に欠かせない仮説を検証し、改善するメソッドを取り入れることでエンジニアリングの楽しみを体験いただきました。

デザインクラス ミニ四駆でカーデザインを楽しもう

デザインクラスでは、真空成形機という普段身の回りのものでは多く使われていながらも、実際に制作過程を見ることの少ない技術にふれながら、その技術とクリエイティブなアイデアを形にしていく楽しみをプロのカーデザイナーたちと体験出来るワークショップを提供しました。

今回は、葛飾のラヤマパックが開発したV-formerというデスクトップの真空成形機を提供いただきました。ラヤマパックのメンバーと日産のデザインスタジオ、クリエイティブボックスが中心になり、3DプリンタメーカーのFormlabsや、デザイナーのThe Maruta Worksこと圓田さんが加わり、真空成形機を使ってオリジナルボディーを作るというワークショップです。実は真空成形を使ったボディワークショップは2年前にも実施したのですが、今回は真空成形のプロ、ラヤマパックさんが参加したことはもちろん、前回の経験を持ったメンバーが参加したことで、内容も運用面もクオリティが大幅にアップ!副産物として、ハンディタイプの真空成形機が生み出されたり、真空成形のモールドに適した3Dプリントの後処理なんてノウハウも生まれました。

 

TINY WHOOPスタートアップクラス

マイクロドローンのコミュニティWTW(Wednesday Tokyo Whoopers)が実施したTINY WHOOP初心者に向けたワークショップ。初めたい人が多い中、機材や免許やどこで飛ばせるのか?などわからないことが多くて足踏みしている初心者に向けてWTWメンバーがスタートのいろはを丁寧に解説。実際にWTWの主催者でもある女性ドローンレーサーのしろまいさんの飛行テクニックにふれる機会もあってみんなその魅力に虜になっていました。

目指せドローンパイロット!ドローン組立&飛行体験

子どもたち向けに実施したこちらのワークショップでは、講師は東京大学で創造的ものづくり・創造性工学プロジェクト授業を担当し、毎年モナコを目指すラリー・モンテカルロ・ヒストリックに参戦しているMONTE氏とその学生が担当し、トイドローンを使ったワークショップを開催。ドローンが実際に飛ぶ仕組みをプロペラを自分でつけてみたり、ボディの一部をハンダで加工してみたりと仕組みを基礎から学べる内容で実施。またこのワークショップでは、FabCafeがクリエイティブボックスと開発したホバーキットもついてきて、ドローンを2つの遊び方で楽しめるお得な内容となりました。

レゴ ローバーチャレンジ

10Fでは秘密結社ブロック団によるレゴを使ったローバーワークショップが開催。今年の夏にFabCafeと宇宙兄弟のコラボの際に実施して好評を博した、レゴのローバーキットと四足歩行キットを組み立て、レースを楽しむワークショップを実施しました。レゴを組み合わせることで、子どもたちが簡単に創意工夫を楽しめるのはさすが。

FAB RACERS CUP

今回は、ミニ四駆、AI、レゴ、ドローンなど様々なレースが開催されましたが、その中でビギナーレースとエキシビジョンマッチ、そしてメインレースをご紹介。

ビギナーレース

毎回大盛り上がりのビギナーレース。午前中のワークショップでマシンを作り上げた子どもたちがレースを行います。エンジニアリングワークショップで自分なりにセッティングを考え、ボディデザインワークショップで作り上げたマシンを誇らしげに持つ子どもたちはレースのワクワクを抑えられない様子です。

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タミヤさんからもたくさん賞品をご提供いただきました。

エキシビジョンマッチ

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臨戦態勢のドローンレーサーたち。絵になりますね。

エキシビジョンマッチでは、ミニ四駆とドローンとホバーがリレー形式で対決!今回、初の試みとして実施したエキシビジョンマッチ。ミニ四駆とドローン、ホバーのレーサーそれぞれがタッグを組み3チームを結成、3つのフロアを駆け回りながら競うというなんともチャレンジングなレースです。

3つのチームはなんとも豪華な顔ぶれ。

  • TEAM RED マッドさん(WTWきっての知性派レーサー)、向井さん(ホーバーキットの生みの親)、根津さん(言わずとしれたミニ四駆ライキリデザイナー&大会委員長)
  • TEAM WHITE しろまいさん(ドローン界一の美女でWTW創始者)、よわたりさん(ストリートミニ四駆の伝道師)、光永さん(ミニ四駆界のアイドル的存在)
  • TEAM BLUE  後藤さん(プロのドローンレーサー)、金岡くん(FabCafeエンジニアでホバーキット開発者の一人)、こはるちゃん(FAB RACERSチャンピオンを父に持つサラブレッド)

第一走者はマイクロドローンチーム。1Fのカフェフロアを2週し、そこからなんと店外へ出て2Fのフロアに外から侵入するというドローンならではの離れ業で第二走者のホバーメンバーにバトンタッチします!
ここはさすがプロのドローンレーサー後藤さんが圧倒的なスピードでリードしながらも、他の2名も負けじと追いついていくレースで店外に。風が少し強い当日でしたが、その風にも負けず2Fの窓から室内に入ってランディングポジションに到着。

バトンを受けたホバーメンバーは諸々の事情でなんとマシンを抱えて走ってエレベーターに向かい2Fから10Fへ!しかし、なかなかエレベーターが来ない!ここは先にボタン押しておくなどの工夫も求められたシーンですね。観客はただエレベーターを待つ3人のおじさんをモニター越しに見るというシュールな展開に。なんとかやって来たエレベーターに乗った3人は、10Fでオーバールコースを2周したらまたエレベーターで2Fに。ホバーに慣れている向井さん、金岡くんが先に2Fに到着、ラスト走者のミニ四駆メンバーにバトンを渡します。

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エレベーターチャンス待ちのホバーレーサーたち。これでもレース中。

そしていよいよ最終走者の根津さん、こはるちゃんがスタート!好スタートを切った両者ですが、堅実な走りを見せたこはるちゃんを振り切り、根津さんが意地を見せつけ優勝。TEAM REDが見事エキシビジョンマッチの勝者となりました。

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エキシビジョンレースは根津さんのTEAM REDが優勝!さすが大会委員長!

メインレース

今回、ミニ四駆レーサーも多く参加し、ミニ四駆レーサーたちが圧倒的に有利かと思われていましたが、FAB RACERたちも大いに奮闘。昨年の覇者、五味さん、そして準優勝の大谷さんの二人はさすが毎年参加しているだけあって、それぞれ独自スタイルで発展させたマシンでミニ四駆レーサーたちと対等に勝負。今年はそれ以外にどんな意外性あるマシンが生まれるのかレース前からワクワクが止まりません。ここでいくつかユニークなマシンをご紹介しましょう。

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Quantum赤坂さんのミニ四駆AI。なんと言ってもその能力は未知数だけにみんなが展開を楽しみにしていたマシンの一つ。コース途中で止まってみたり、のんびりしてみたりと挙動不審な動きがペットのような可愛さを見せてくれました。将来AIに仕事を奪われることはなさそうをいう安心感を提供してくれたマシンです。

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横浜の板金屋さん海内工業と一緒に板金マシンを作り上げた慶応大学の学生たちの板金クジラマシン。見た目は可愛い青いクジラですが、中身はものづくりの固まり。板金ならではの折りを活かした柔軟なボディーがコースにローラーを押さえつけて飛び出しを制御していました。

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毎回カッコいいデザインのマシンで参加の圓田さん。なんと今回はオリジナルマシンをシルバーで鋳造したマシンで出場。この流れはまさに師匠の藤村さんと同じ!見た目にこだわり重さで負けるパターンですね。もちろん予想通りの結果で退場。出落ち組健在です。 ミニ四駆を鋳造する前に、奥さんへのプレゼントをゴールドで鋳造することをおすすめします!

そして今回一番のインパクトマシン「平成」。もはや説明はいらないのではという見た目の最初で最後の平成を偲ぶミニ四駆です。立体コースに対応するため、平成の文字が入った額(?)はスーパーマルチリンクWGMサスペンションといういかにもな名前の構造をしています。カーデザイナーでもある杉谷さんがいうとなんか凄そう。。と思わせるのですが、要はWGM(輪ゴム)仕掛けという何段ものオチを備えたマシンです。

毎回、会場の盛り上がりと共に笑いが憑依したマシンが登場するんですが、それが今回このマシンでした。走行するたびになぜかMCの根津さんの前でコースアウトし、平成の文字を根津さんに何度も突きつけるという奇術をやってのけ、平成最後のFAB RACERS CUPに大きな爪痕を残してくれました。

32410639978_4c57f8842c_k何故か毎回根津さんの前でこうなる「平成」四駆

FAB RACERSでは毎回観客が最も盛り上がるマシンが登場します。去年、一昨年は遠藤さんと西川さんが独占していたポジションですが、今年は向井さんの作ったホバードローンが特別賞を受賞する大活躍を見せました。

もともとは、トイドローンを改造したホバーをラジコンで走らせていた向井さんが、より軽量化を図り、真空成形でボディーを作り、ミニ四駆コースを走るためのガイドローラーなどを実装したこのマシン。一見賑やかし系の出落ちか?と思わせましたが、そのスピードは驚異的。最大難所のドラゴンバックもふわりと乗り越え、ミニ四駆マシンにも勝ってしまう話題性と実力を兼ね備えたマシンでした。その走りは、速さとユニークさで観衆を魅了!FAB RACERSの新たな可能性が生まれた瞬間です。

その他にもこれまでのレースで実績を残した連結マシンで望んだ大谷さん。それを真似た(?)加藤さんの連結マシン同士の対決も会場を沸かせましたね。結果、大谷さんは今年も3位入賞を果たす見事な走りを見せてくれ、FABマシンの面子を保ってくれました。

そして優勝は迅ノ助さん!速さと空中制御の見事さはやはりミニ四駆レーサーの経験値がものをいうところ。圧巻の走りで優勝!! ちょうどラジコンを始めようと思っていたというタイミングで根津さんのライキリラジコンキットをゲットです。おめでとうございます!

その他にも工夫が詰まったマシンがたくさん。

今回も子どもたちの笑顔に溢れた大会でした。

今回も盛大に盛り上がったFAB RACERS CUP。子供から大人までたくさんの笑顔が見れたイベントとなりました。協力いただいた運営スタッフのみなさん、協賛いただいた多くの企業のみなさん、本当にありがとうございました。来年も根津さんとやるぞ!と宣言したので、ぜひ妄想性能を頭の中で巡らせて、その妄想を形にして来年チャレンジしてくださいね。

また来年のFAB RACERS CUPでお会いしましょう!

 

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ちなみに今回は先生を務める専門学校の授業で参加できなかった大会副委員長のやまざきさん。いつもどおりのオチつきVTRで登場していただきました。

 

※ミニ四駆はタミヤの登録商標です。

<協力>

(株)タミヤ
(株)ラヤマパック
(株)QUANTUM
海内工業(株)
ゴールドストーンズ
KTC京都機械工具株式会社
チャイルドハウス ドリーム

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